クラウドワークスのワーカーなら、さしずめギガーか

国をまたぐ雇用が急成長 ネットで請負37兆円市場へ

経済

2018/1/26 20:51
日本経済新聞 電子版

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 インターネット経由で単発の仕事を依頼したり、受注したりする請負経済(ギグ・エコノミー)市場が世界に広がっている。米国などが新興国からIT(情報技術)人材などを調達するケースが増え、あと7年ほどで世界の市場規模は37兆円に成長するとの試算もある。デジタル経済の恩恵で有能な個人には国境を問わず雇用の門戸が広がる一方、先進国の労働単価には下落圧力が強まるとの観測も増えている。

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 英オックスフォード大学のインターネット研究所が、「Fiverr」(ファイバー)など複数の英語圏の大手サイトでやりとりされる様々な単発の仕事を調べて指数化した。2016年5月末時点を100とすると今年1月には124.6と、約1年半で市場が約2割増えた。

 大手会計事務所PwCの調査では、25年までにギグ市場の規模は約3350億ドル(約37兆円)に達し、人口が700万人を超える香港の域内総生産(GDP)を上回る見込み。アフリカなど途上国でのスマートフォン(スマホ)の普及などで加速度的に増えそうだ。

 最大の労働供給国はインドだ。ギグ市場全体の27%を占め、バングラデシュの18%など南アジア諸国が続く。多くはIT系のソフトウエア開発技術者だが、情報サイトなどの制作に関わるメディア系も多い。

 一方、こうした人材を最も多く使うのは米国だ。大手サイトに掲載される仕事の発注元のちょうど半分は米国企業。次いで英国、カナダなど先進国が続く。

 米JPモルガン・チェースの推計では米国でプログラミングやライドシェア(相乗り)などのギグ市場に従事する人は外国在住者も含め人口の2%相当、630万人に上る。これは有力な30サイトに限ったもので、中小の請負サイトを含めはるかに多くの人が仕事を請け負っている。

 市場がまだ小さい日本でも、ギグ市場は人々の働き方を変え始めている。

 20代の佐藤明日香さん(仮名)は3年前から恋人のいるスウェーデンで暮らしながら、日本の大手プラットフォーム「クラウドワークス」を通じてデザインや翻訳の仕事を請け負っている。「現地ではアルバイトを含め就業が難しい。家族や恋人と一緒に来た人にはいいサービス」と話す。

 「様々な制約から働けなかった人がネットで仕事を見つけ収入の道が開ける」。一般社団法人シェアリングエコノミー協会(東京・千代田)事務局担当の石山アンジュさんはこう話す。

 クラウドワークスに登録しているユーザー企業はNTTドコモなど22.5万社、働き手は165万人だ。日本は言語の壁もあってインドなどの労働力を自由に使いこなせる状況は遠い。それでも人手不足に苦慮する企業の活用が増えそうだ。

 専門家が注目するのは賃金への影響だ。第一生命経済研究所の星野卓也氏によると、日本と米国ではいずれも10年以降、「失業率が下がると賃金上昇率は逆に上がる」という負の相関関係が顕著に低下している。

 米国では過去(1995~2009年)には失業率が5%を切って雇用が引き締まってくると賃金上昇率も4%程度上がる傾向がみられた。ところが、請負経済が普及し始めた10~16年にかけては、失業率が5%を切っても賃金は2.5%しか上がらず、連動性が薄れた。日本でも近年同様の傾向が見てとれる。

 ネットを通じて世界の労働市場が一体化していく中で「グローバルな規模で安い労働供給が増え、賃金や物価が上がりにくい経済構造に変化し始めている」と星野氏はみる。

 英イングランド銀行(中央銀行)チーフエコノミストのアンドルー・ホールデン氏も、国境や時間を問わない仕事の切り売りや自営業化といった「労働力の変質」が、世界的な賃金低迷という現象の一因とみている。

 労組の組織率低下も見逃せない。英では1990年には38%程度あった労働組織の加入比率が2016年に23%にまで低下。米国でも16%から10%に、日本でも60%から44%へと大きく下がった。ギグ市場拡大でさらに労組の発言力が低下し、低インフレに拍車をかけるかもしれない。

 ギグ市場の台頭で労働力を調達するルートが開ける半面、賃金・物価には逆風が強まり各国の経済・金融政策運営のかじ取りは難しさを増す。年金、医療といった社会保障の脆弱性も含め、労働者のセーフティーネット整備や権利保護をどう進めていくかなど、政府や企業は重たい課題に直面する。(浜美佐)
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by cwhihyou | 2018-01-27 10:06 | Comments(0)
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