写経 日経社説

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大学をどう変える(上)「公共財」としての価値を高めよ2017.8.20
政府は高等教育の無償化の検討を始めた。だが、私立大学の約40%が定員割れし、大半の大学が学力による学生の選抜機能を失っている。現状のまま無償化で門戸を広げれば、大学の一層の質の低下は避けられない。
必要なのは、量的拡大よりも国際競争力の強化だ。人材育成や研究の中核を担う「公共財」としての価値をいかに高めるのか。長期的な視野に立ち、抜本的な大学改革に乗り出す時だ。
規模適正化が課題に
まず、検討すべきは大学の規模の適正化だ。
バブル経済崩壊後の低成長、少子化時代に、大学はその数、入学定員を増やし続けた。その結果、志願者の90%が進学する「全入」に近づいた。水ぶくれした大学限られた予算を奪い合い、国全体としての教育・研究の投資効率を低下させてはいないか。
18歳人口のピークは1992年度の205万人。直近は120万人で、2040年には88万人と予測される。現在の大学数は780.92年に比べ18歳人口は約40%減ったが、大学数は約50%、入学定員も約25%それぞれ増加した。
今の大学進学率、入学定員が維持されると仮定すると、20年後には十数万人規模の供給過剰になる。入学定員1000人の大学が100校以上不要となる計算だ。
1908年代に18歳人口が減少した米国では、大学が入学者数を抑制し、選抜機能を維持した。新入生の減少で大学は授業料を引き上げたが、連邦政府は貸与奨学金と寄付制度の拡充という支援策を講じた。少子化が進む韓国では現在、大学を5段階にランク分けし、評価下位大学に定員削減を求める荒療治を始めた。
日本でもようやく規模適正化の議論が始まった。少子化による教員採用減が確実な国立大の教員養成大学・学部に対し、文部科学省の有識者会議は定員削減や他大学との機能集約・統合を求める報告書案を示した。妥当な判断だ。
20年後には日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットなどにより代替可能という民間調査がある。産業別就業者の推計なども参考に今後は、国立私立の設置形態の別を問わず、入学定員の総枠の削減を視野に、時代に適合した学部の重点化を図るべきだ。
政府は東京23区内の私立大学の定員増を今後認めない方針を決めた。若者の東京一極集中を是正する目的だが「木を見て森を見ず」の感が否めない。問題はむしろ学生の選抜機能を失い教育の質の低下が懸念される地方の小規模大学だ。大学間の単位互換や校地の共有化など、地域教育の中核となるような統合・再編が望まれる。
大学の数や入学定員が急増したのは、「事前規制から事後チェックへ」という政府の規制緩和策が大学設置基準にも及び、一定の要件を満たせば新規開設が認められるようになったからだ。
規制緩和の本質は、新規参入を促す一方、質の低いサービスは市場から淘汰される仕組みにある。しかし、大学の経営や教育水準をチェックするため2004年度に文科省が導入した「認証評価制度」がうまく機能していない。
評価に応じ傾斜配分を
大学基準協会などの機関が評価結果を公表しているが、社会的にほとんど認知されていない。財務省の財政制度等審議会は、主に規模や定員の充足率に応じ交付する私立大の補助金を評価結果に連動させ傾斜配分すべきだと提言。学術論文の数や学生の就職実績なども勘案すべきだと指摘する。
どんな評価指標が妥当かは議論の余地があるが、公費の使途や効果の「見える化」は国民的な要請だ。評価機能の拡充も課題だ。
その点、気になる動きがある。評価機関によって経営や教育が「不適切」とされた地方の私立大が公立大に衣替えするなど、定員割れの私大を地方交付税で救済する事例が相次いでいる。納税者の観点からは、違和感がある。
日本の大学の国際的な評価が総じて低調なのは、密度の低い教育を量的に拡大してきたからだ。高等教育無償化の前提は、各大学が入学金や授業料が公費で充当されるにふさわしい公的価値を持つことを、社会に証明することにある。
国はまず、定員を戦略的に削減し教育の質を高める大学を支援するなど規模適正化と、外部評価に応じた資金配分に着手すべきだ。

大学をどう変える(下) 強みを伸ばし自ら将来像描こう2017.8.21
日本の大学は国際化やIT(情報技術)時代を担う人材の教育で後れを取り、世界をリードしてきた科学研究でも陰りが見え始めている。この状況を変えるには何が必要なのか。
大学が自ら強みを見つけ、それを伸ばす将来像を描くことが欠かせない。国頼みの姿勢や横並び体質から脱する必要もある。特色ある戦略を打ち出すため、ガバナンス(統治)改革が第一歩になる。
横並びから脱する
理工系大学では日本を代表する東京工業大。2012年に就任した三島良直学長が「第2の建学」とも呼べる改革を進めている。昨春には学部と大学院の区分けを廃し「学院」に一本化した。専攻を超えた研究チームもつくり、新分野に果敢に挑んでいる。
成果も表れてきた。英科学誌が今春公表した日本の大学・研究機関ランキングでは、東工大は国内6位ながらも論文の増加率でトップクラスだった。大隈良典教授がノーベル賞を受賞し、入学志願者も増加。三島学長は「30年には世界の研究大学の10指に名を連ねる」と高い目標を掲げる。
大阪大は医薬関連企業が多い地元の利を生かし、産学連携を強めている。免疫学の研究所では中外製薬から10年間で総額100億円の資金を受けて共同研究を始め、海外での知名度も増してきた。
ただ、700校以上ある公立私立大のうち、改革に積極的に取り組んでいるのはまだ少数だ。
有力教育誌や専門機関が発表する世界の大学ランキングによれば、日本から上位100校に入るのは東大、京大など数校だけ。中国やシンガポールの大学が急伸しているのに比べ、日本の大学は外国人教員や留学生が少ないなど国際化の遅れが目立つ。
教育で進む技術革新にも乗り遅れている。米国の主要大は「ムーク」と呼ばれるオンライン講義を活用し、世界で3千万人以上に授業を配信している。だが日本で活用している大学はごく一部。将来の人工知能(AI)社会を担う人材の育成にも懸念が広がる。
安倍政権は13年の成長戦略に「今後10年以内に世界の大学ランキング上位100校に日本から10校以上を入れる」と盛り、文部科学省は国際化の重点校を選んだ。だが官の支援頼みでは実効性に疑問が残る。大学が自ら将来像を描き実践していく必要がある。
ここ数年、受験生や企業の評価が高いのが国際教養大(秋田県)や立命館アジア太平洋大(大分県)など、世界に通じる人材教育をめざす大学だ。授業を英語で行うなど、小規模大学の利点を生かして独自色を打ち出してきた。
地方大でも地元の強みに注目する大学が出始めている。
静岡大は2年前、アジアから毎年約80人の留学生を招く「アジアブリッジ計画」を始めた。地元ではスズキやヤマハなど海外展開する企業が多く、これらの企業が学生の研修などで協力する。
今秋修了する大学院1期生のなかには、地元企業に就職が内定した留学生もいる。鈴木滋彦副学長は「日本で学びたい留学生と、現地法人の幹部候補生を育てたい企業の希望をともに満たし、大学にとっても活路となる」と話す。
教育と経営の分離を
茨城大も今春、地域貢献をえざして人文社会科学部を新設した。学生に複数の専攻を持たせ、視野の広い人材を育てる。文科省は少子化に対応して人文系学部の縮小を求めているが、先手を打って大学自身が改革に乗り出した。
これらの大学に共通するのは、学長や副学長が強いリーダーシップを発揮していることだ。
日本の大学では教授会の権限が強く、学部間の利害調整や迅速な意思決定を阻んできた。この反省から2年前に学校教育法などが改正され、「教授会は意見を述べるが、最終決定は学長が下す」と統治の改革へ踏み出した。
だが改革はまだ不十分だ。欧米では学長とは別に、戦略づくりや財務を専門に担当する副学長格のポストを設け、民間を含め学外から人材を招く大学が多い。経営と教育・研究とで、役割分担と責任を明確にするためだ。
もう一段の統治改革に向け、制度を設計するのは文科省の役割だろう。ただし、ここの大学の戦略づくりに国が口をはさむのではなく、大学の自主性を最大限に引き出せるような改革にすべきだ。
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by cwhihyou | 2017-08-21 09:47 | Comments(0)
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