写経、日経ビジネス記事2017.8.9

(moreに展開)
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目覚めよサプライチェーン 結局は生産回帰なんてしないのか 消費者は自国製にそこまでこだわらない
かつて私は自動車メーカーで勤務していた。自動車は為替によって利益が左右されるといわれる。部品調達だけではなく、完成車の生産も為替によって検討しなければならない。また、実際に頻繁に、国ごとに生産する台数が変化していた。いわば、生産変動が当たり前の世界にいた。
その後、私は調達業務のコンサルタントになったが、「生産回帰」という言葉の使われ方に違和感を抱いた。というのも、生産回帰というくらいなら、普通は生産の大半が日本に戻ってきているイメージだ。しかし、「一部」の機種の「一部」の生産が、日本に戻ってきているという。その程度なら、自動車では日常茶飯事だ。別に生産回帰として騒ぐほどでもない。
さらに、「一部」の機種の「一部」の生産は日本に戻っても、全体的な傾向としては、海外生産は拡大しているという。それはほんとうに生産回帰と呼ぶべきものなのか、私は不思議に感じている。
たとえば「2016年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」を見てみよう。49ページでは、確かに日本にたくさん生産が戻ってきている、と思いきや、51ページを見ると日本に戻ってきているのはその一部にすぎず、むしろ大半は中国など海外に流出しているのが分かる。トータルでは生産は回帰していないと断ずるほうが適切ではないか。もちろん、全体傾向は不変でも、少しでも日本に戻ったらよしとする見方もあるかもしれないが。
■ウォルマートの製造業回帰宣言
ウォルマートは「製造業刷新のためのロードマップ」を発表した。詳細はポリシーをご覧いただくとして、ワッペンまで作成して掲げている「Walmart INVESTING IN AMERICAN JOBS(ウォルマートは米国の製造業に投資する)」という標語が印象的だ。政府や議会にも協力してほしいところと、小売業界で努力せねばならないところをあげて、米国の製造業全体を底上げするのが狙いだ。
目標は3000億ドル分の生産を増やすことと、雇用も同じく150万人分を増やすことだ(なお、これは関連業種の雇用も含めてのもので、製造業のみでは25万人ほどの雇用増を目指すとしている)。なおこれは2013年から開始されたプログラムで、開始当初より、目標値を上積みしたかっこうだ。
■トランプ大統領の賞賛はすごいが
トランプ大統領は、米国製を露骨なまでに賞賛し、ホワイトハウスのブログにも掲載している。米国全州の商品と会社名をあげ、下のメッセージ欄には「トランプ大統領は大統領就任の初日から、アメリカの労働者と家族のために闘ってきました(President Trump has been fighting on behalf of Americna workes and families since the first day of his Presidency)」とある。その他、自画自賛を含めて檄文が並んでいる。
冒頭で私は、生産回帰の「件数」として、本当に日本へ回帰しているのかと疑問を呈した。そして、ウォルマートは何より雇用を目指している。ところで、そもそも米国に戻ってくる必要があるのだろうか。少なくとも、全業界を総じて語ってもいいのだろうか。
その点について、面白いことに次の王な指摘がある。これはPew Research Centerの情報だが、米国では製造業の雇用は大幅に減って、しかし、生産量は大幅に増えているのだ。1987年から2017年までの推移を見よう。たとえば、雇用は1750万人から1240万人に減少している。確かに事実だ。ただ生産量は倍になっているのだ。この記事では、アンケートに答えた人のほとんどが、米国製造業の雇用が減少しているのは知っているものの、生産量が増えているとは知らなかったとしている。
この記事では、もちろん衣料などの商品によっては海外に流れているのは事実としながらも、コンピューターや電気製品等は生産量をむしろ増やしていると指摘している。だから、一般的に生産が海外に移管する、といっても、全業界をまとめて議論するのは危険であり、そもそも全体の生産量が増加している事実を失念してはいけない、というのだ。
■ウォルマートは二重離反に陥っているのか
さらに、前述のウォルマートについて、いくつかの疑念が提示されている。ロイターによると、ウォルマートは激しい競争の中で、オンライン販売では、結局米国製ではなく他国製品のラインナップを増やしていると指摘した。
中国やイギリス、カナダなどの各企業にオンライン販売を加速するために協力を呼びかけているという。周知の通り、ネット通販では、ライバルのアマゾンが商品ラインナップでは先を行く。ウォルマートは追いつこうと、5000万アイテムを用意する。しかし、アマゾンは3億アイテムを用意しているのだ。もちろん敵はアマゾンだけではない。これからも無数に登場してウォルマートに闘いを挑んでくるだろう。
これからウォルマートはネット上での闘いを本格化させようとしているが、やはり幅広い品揃えと、なんといっても価格優位性がカギとなる。もちろん、多くを販売することで、(製造業者という意味ではなく)店舗や倉庫管理などで雇用が生まれ、結果として多くの米国人を雇う結果になるかもしれない。ここには、雇用も大切だけれど、競争に勝たなきゃ、そもそも従業員を雇えない、というリアルがある。
前述の記事にもあるとおり、トランプ大統領の発言とうらはらに、さほど多くの米国人は米国製にこだわりをもっていない。米国製が良い、とは共通した意見だが、多くのお金を払うほどではないと答えている。ウォルマートは、米国製造業者の刷新プログラム、オンライン戦争、米国人消費者の本音、という三者のなかでジレンマを抱えている。
ところで、私たちは、ふたたび自問する季節に行き着いたのではないかと思う。このコラムで生産回帰について疑問を呈したのは数年も前のことになる。自問とは、すなわち、生産回帰はそもそも必要なのだろうか――と。
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nakaminousuikiji,syakyousitesonsita

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by cwhihyou | 2017-08-09 06:26 | Comments(0)
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