写経、日経社説2017.4.8

シリア攻撃が示す米政権の方向転換
世界をどういう方向に導こうとしているのか。
米トランプ政権のシリア攻撃からは包括的な戦略が見えてこない。
ロシアと連携して中東を安定させる、という従来の方針とは正反対の動きである。
超大国の急旋回は世界の混乱に拍車をかけかねない。
シリアのアサド政権が罪もない市民を化学兵器で殺戮したのをみて、方針を変えた。
トランプ大統領はそう強調した。
シリアは化学兵器禁止条約の加盟国であり、本当に使用したのならば非難されてしかるべきだ。
とはいえ、国連安全保障理事会などに明確な証拠を提示することもなしに武力行使をしたのは、はやり過ぎである。
米国は「大量破壊兵器を保有している」として2003年にイラクに攻め込んだが、発見できなかった。
そうした過去への反省から武力行使に一貫して消極的だったオバマ前大統領との違いを出したかったのか。
だとすれば、大統領選で公約した「米国は世界の警察官ではない」との発言と辻褄が合わない。
政権幹部とロシアとの不透明な関係を隠蔽する狙いがあったのだとすれば重大問題である。
ロシアは引き続きアサド政権を支える構えだ。
米国が反アサドに回ることで内戦はさらに長引く可能性が高い。
難民が再び大量に生まれ、欧州になだれ込んだ場合への備えは検討してあるのか。
ドイツのメルケル首相との首脳会談でトランプ氏は握手もしなかった。
あとは欧州連合(EU)に任せきりにするというのではあまりに無責任だ。
イラン情勢も不透明になる。
米ロが保証人になる形で核兵器を封じ込めたのに、合意が振り出しに戻るかもしれない。
アジアの安保環境への影響はまだ読み切れない。
トランプ政権は武力行使をためらわない。
そう印象付け、北朝鮮に風圧を与える効果はあるだろう。
ただ、それがかえって暴発の引き金になる恐れも十分ある。
北朝鮮の背後にいる中国との関係も微妙である。
ロシアと手を組んで中国を孤立させる、という外交カードがもはや役立たないことだけは確かである。
ホワイトハウスではさまざまな権力闘争がなされているようで、相変わらず誰が司令塔なのかがよくわからない。
世界がトランプ政権に振り回される状況は終わりそうもない。
その覚悟が必要だ。
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国際拠点生かし監査改革急げ
各国で監査法人を監督する公的機関の国際組織が、都内に常設の本部事務局を設立した。
金融分野の国際機関が日本に本部を置くのは初めてという。
国内外の専門家が活発に往来し監査への関心が高まることが期待される。
企業の財務諸表の信頼性を保証する監査は、市場経済が正常に機能するために欠かせないインフラのひとつである。
国際組織の拠点が設立されるのをきっかけとして、日本の監査の質を高める改革を急ぎたい。
本部を設けたのは「監査監督機関国際フォーラム」(IFIAR)という組織だ。
米エネルギー会社エンロンの不正会計事件の反省から各国で監査法人を監督する動きが強まったことを受け、2006年に発足した。
現在は日本の金融庁を含む、52カ国・地域の当局が加盟する。
企業活動のグルーバル化に伴い、複数の国にまたがる監査が珍しくなくなった。
監査が適正かどうかを監督する当局も国際連携が必要となる。
金融庁は各国当局との情報交換を密にすることにより、監査法人を厳しく指導する体制を整えるべきだ。
監査法人の側も厳格な監査に向けた取り組みを進める必要がある。
甘い監査が企業を衰えさせる結果を招くことは、会計不祥事が見過ごされた東芝の現在の苦境がよく物語っている。
監査法人は何よりも、不正を見抜く技量を高めなければならない。
経験の乏しい監査人への教育などに時間をかける必要がある。
膨大な財務データを分析するために人工知能(AI)を使う動きも一部で始まった。
そうした試みを加速させるべきだ。
上場企業の社会取締役にあたる外部人材を招き、監査法人の運営が適切かどうかをチェックすることも有効だ。
会計・監査の業界はとかく閉鎖的と批判される。
企業財務の専門家や市場関係者などの目を意識すれば緊張感が生まれ、監査人と企業が癒着するリスクも低減できるはずだ。
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by cwhihyou | 2017-04-10 11:31 | Comments(0)
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