写経、日経社説2017.4.9

米中は北朝鮮問題で踏み込んだ協力を
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が米国で初会談した。
関係がギクシャクしてきた両国の間に外交・安全保障、経済、サイバー安全保障など4分野でハイレベル対話の枠組みができるのは評価できる。
だが、日本の安全保障に大きく関わる北朝鮮の核・ミサイル開発問題を巡っては、協力の方向を示したものの、目に見える合意は打ち出せなかった。
米中首脳会談の直前、北朝鮮はあえて弾道ミサイルの発射実験に踏み切った。
北朝鮮が挑発を繰り返すのは、中国が戦略的に北朝鮮側に立つことを見抜いているからでもある。
しかも中国は北朝鮮の脅威に備える米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備にも強く反対してきた。
中国の一連の行動は北朝鮮を利するだけで、「朝鮮半島の非核化」という自ら掲げる目標の実現まで阻むことになる。
中国はまず北朝鮮に効果が確認できる手法で圧力をかけるべきだ。
南シナ海問題を巡る米中両国の立場の違いも鮮明である。
中国による一方的な岩礁埋め立てと軍事拠点化にストップをかける実力があるのは米国だけだ。
東南アジア諸国の不安も大きいだけに、実効性を持つ形で中国を説得する必要がある。
習氏は会談で中国人民解放軍と米軍の関係が米中関係の重要な部分であると強調した。
衝突を避ける枠組みが重要と考えるなら、まず自ら一方的な行動を慎むのが先だろう。
経済を巡る議論は、米国が抱える巨額の対中貿易赤字の問題に集中した。
トランプ氏はかねて赤字を生み続ける今の条件で貿易を続けることはできないとの意向を表明している。
貿易不均衡は中国だけの問題ではない。
米国が保護主義の動きを強めるなら日本にも打撃になる。
アジア、世界経済の安定のためにも情勢を注視したい。
安倍晋三首相は先に習氏と同じトランプ氏の別荘を訪ねて会談し、一定の信頼関係を築いた。
同盟国の米国と、経済で相互に依存する中国との関係は、日本の行方をも左右する。
トランプ氏は年内に日本、中国を訪問する予定だ。
日本としては米国との信頼を維持・強化しつつ、対中関係のもう一段の改善も視野に入れる必要がある。
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教育勅語は道徳教材に使えぬ
教育勅語を巡る応酬が収まらない。
勅語は大日本帝国憲法の下、天皇を君主、国民を臣民とする国家観を補強する目的でつくられた規範だ。
史実として学ぶ意義はあるが、子供たちの道徳教材として用いることは妥当ではない。
政府は教育勅語について「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」との答弁書を閣議決定した。
現に中学、高校の歴史、公民の教科書には勅語の全文、または一部が掲載されている。
近現代の史料として勅語の果たした役割を学ぶことに異論はない。
むしろ勅語が示す家族国家観が戦時の総動員体制とどのように融合したのかなどを、生徒の発達段階や興味、関心に応じ、能動的に学ぶことは、新しい学習指導要領の主旨にも合致するだろう。
今回、教育勅語が注目されたのは、学校法人「森友学園」(大阪市)が運営する幼稚園で、園児に暗唱させていたことが問題視されたからだ。
勅語が説く夫婦愛などの徳目が現代社会でも通じる、と擁護する閣僚発言もあり、波紋が広がっている。
過去の経緯を踏まえ、冷静に議論すべきだ。
教育勅語は1890年、大日本帝国憲法が施行された年に発布された。
親孝行など臣民が守るべき徳目を列挙する一方、「万一危急の大事が起こったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身をささげて皇室国家のためにつくせ」(旧文部省の通釈)と説く。
個々の徳目の当否以前に、天皇が臣民に説諭する「語りの構造」自体が、国民主権を原理とする現憲法になじまないことは明白だ。
1948年に衆参両院が、排除や失効を決議したゆえんである。
その意味では、学校現場を預かる松野博一文部科学相が、「道徳を教えるために教育勅語のこの部分を使ってはいけないと私が申し上げるべきではない」との認識を示したことには違和感を覚える。
勅語は部分ではなく全体の効力を失ったと解すべきだ。
道徳の経典として復活させてはいけない。
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by cwhihyou | 2017-04-09 09:08 | Comments(0)
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